目次(文字数:2540字前後)
人生いろいろ…
生
一昨日、久しぶりに地元に来ていた友人と会うことになった。
この度、彼が結婚したというので、ささやかながらお祝いの意味も込めた飲み会だ。
結婚式は行わないという事だったので、その代わりみたいな感じだ。
待ち合わせは夜7時、私もその居酒屋へ直行。友人はすでに来ていた。
以前よりもちょっと太ったように見えるのは、きっとその幸せのせいだろう。
屈託の無い笑顔で、新妻となった奥さんを紹介される。
来てるとは聞いてなかったので、しどろもどろに挨拶を交わす。
やはり初対面の人は何かと緊張してしまう…
その後、小学校時代の友人もやってきて、4人での飲み会が始まる。
私くらいの年代になると結婚そのものの報告も珍しくなる。
20代の時はよくあったけれど…
2年前まで女っ気も無いと嘆いていた彼が、こんなにも優しそうな奥さんをゲットするとなると、オッサン世代も捨てたもんじゃないのだ。
新婚の彼とは保育園からの付き合いだった。しばらく疎遠になっていたけれど、ふとしたきっかけでまた交友が生まれるから不思議なものだ。
もうお互い中年で、あの頃の様な無邪気さのカケラも無いけれど、年齢が一ケタの頃からお互いを知っている。その仲間意識というのは、いつまで経っても変わらない様だ…
平日ということもあって、新婚の友人以外は明日も仕事だ。
なので、一次会でその飲み会はお開き。結婚式代わりのお祝いとしては非常に短かったけれど、懐かしい話に華を咲かせ久々に楽しい飲み会だった。
お互いにまた会う約束をして、手を振って別れる。
同級生の昔の話なんて、当事者でない奥さんにとっては退屈な話でしかないのかも知れない。しかしニコニコと周囲に合わせて笑うその仕草。きっと良い人なんだろうな、と思う。
これからも二人、手に手を取り合って幸せになって欲しい。
それにしても頭がフラフラだ…
生ビール2杯に、チューハイ1杯、自分にしては短時間でよく飲んだ方だ。
ほろ酔い加減の帰り道も悪くはない…
後は我が家に帰り、布団に潜って心地の良い夢を見ればいいだけ…
のハズだった…
死
リリリリリーン!リリリリリーン!
夜中12時の静寂を打ち破るようにけたたましく鳴る電話。
眠りについてまだ1時間くらいしか経ってない…
酔っている私は、電話に気づくまでに時間がかかった。
いっそこのまま切れてくれとも願った。
不意に電話の音が止む、ウチの母親が出たのだ。
夜中にここまで鳴るには、ただ事で無い事が予想できたし、一つだけ身に覚えがあった…
それは、じいちゃんの事だった…
じいちゃんは、私にとって母方の祖父にあたる。
御年95歳、数年ほど前までは自分で畑を耕して一人暮らしをしていた程の、屈強の体力の持ち主だった。しかし、ここ数年は痴呆が進み通常の生活もままならなくなっていたので、施設の方へ移っていたのだった。
そんなじいちゃんが亡くなったと言う施設からの電話だった。
この十数年の間に、じいちゃんの家族はことごとく亡くなっていた。自分の奥さん、自分の娘(私の叔母にあたる)、娘の旦那…
私が小さい頃はにぎやかな家族だった。それが一人減り、二人減り…
直属の身よりは孫が一人いるのだが、常に県外を飛び回りすぐに帰ってこれるような状況じゃない。
と言うわけで、実質的な面倒はウチの家族で見てたのだった。
なので、当然連絡も家に来ることになるし、連絡が来たらもちろん向かわなければならない…
が!!
私はお酒をしこたま飲んでてとても動けそうになかった…
昔はそんなことなかったのに、今じゃたったの3杯でフラフラだ。
失敗した…
最近のじいちゃんは容体が悪化していて、いつ亡くなってもおかしくない状態だと言うのはわかっていた。
なので、飲み会の最中にも急に連絡が入る可能性もあった。
ただ友人の都合がその日しかつかず、どうしてもお祝いしたい気持ちもあった。
そして話も弾み、ついつい飲んでしまった…
まさか、今日になってしまうとは…
結局、母親を先に行かせ、私は後からタクシーで行くことになったが、やっとフラフラから立ち直り向かったのは夜中の2時を過ぎた頃だった。
じいちゃんの亡骸は、既にじいちゃんの自宅に戻っていた。
全国的かどうかは知らないが、ウチの地元では火葬まで線香を絶やしてはいけないという風習がある。
つまり一晩、線香係が必要だった。
真夜中だったこともあり、私がその番をする事になった。少しでも休ませるために、母親をいったん家に帰した。どうしても明日からは忙しくなるから。
葬儀屋からもらった線香は一本で2時間ほどもつようだ。
お酒の入った状態で線香番をするのは、思ったよりもキツかった。睡魔が定期的にやってくるのだ…
数時間前までは、新たな人生の門出を祝福していたはずなのに、
今は、長い人生を終えて事切れた一人の人間と向き合っている。
この何とも対称的な不思議な感覚…
爺ちゃんの顔には、白い布が敷かれている。めくると、その顔は思ったよりも穏やかだった。
よく戦争時代の話をしていた。ある地域に派遣された時、夜の町でばったりアメリカ兵と出くわしたが、やけにフレンドリーなその兵士達に話しかけられ、ちょっと仲良くなったりしたそうだ。
私が持つ戦争の無機質なイメージと違ってて、妙に人間っぽい行動が、逆に印象的だった。
しかし、そんな話ももう語られることはない。
ちょっとした感傷に浸りながら、線香も絶やすことなくどうにか朝を迎える事ができた。
それが昨日の出来事です。
まとめ:旅立ちは笑顔で見送るのが理想…
「盆と正月が一度にやってきた」なんて言葉を聞きますが、
まさにこれがそんな感じかな?なんて思いました。
さすがに昨日は忙しかったなあ…
もしもこれがかなり若い方だったとしたら、哀しみに暮れてしまいますが、
やはり95歳ともなると「大往生」と言っても良く、個人的に「よく頑張った!」という感覚があって、正直なところ、あまり悲壮感はないですね。
自分の仕事は時間の融通が効くので、夜に回してますが…
昼は葬儀の手伝い、夜は仕事&ブログとかなりハードワーク…
ブログは休めよ…って感じですが、たぶん私、何があっても続ける気がします…
自分が死ぬ以外は…
なので、何とか乗り切りたいと思ってます。
以上です…