掃除は…大事なんだぜ!
以前に勤めていた会社の社長が言っていた事がある。
「今の自分の部屋の状態が、今の君の心の状態だ。
散らかっていると言う事は心が乱れていると言う事。
整頓されているならば、心が落ち着いていると言う事だ」
当時の自分はその理屈がよくわからなかったし、絶対に違うと思っていた。
なんで部屋の状態が人間の内面に直結しているのか…と…
まあ、こんな事思うくらいだから大方の人が思うように、
私の部屋は散らかってる。
当時からそんな時の方が多かった。
掃除は正直言って苦手な部類なのだ…
辞めてから何年も経つけれど、
今にして思えば、自分の現状と部屋の惨状を見るに…
それは正解だった様に思う。
自分は今、自営業の仕事をしている。
規模は全然大きくはないけれど、
なんとかではあるが暮らしてはいけている。
仕事は基本、自分の部屋でPCとにらめっこしながら行なっている事が多い。
自分で稼ぐと言うのは正直言ってしんどい…
決して安定はしないし、ボーナスだって無い。
自分で選んだ道ではあるのだけれど、上手くいかないことの方が多いし、
ストレスもないわけではない、というかある!メッチャある!
売上が悪いと極端に落ち込むし、しばらく気持ち的に抜け出せなくなる。
イライラして、ムシャクシャして、
ああ、もうどうしよう…と頭を抱えそうになる時、
ふと自分の部屋を見回すのだ。
案の定、汚い…
文房具やらテープやら計算機やらを、またすぐに使うかもと思い手元に置いておく。
そうして、しばらく放置された小道具が、どんどん自分の周りに
山の様に積み上げられていく…
あの言葉を反芻する。
自分の部屋の状態が、
今の自分の心の状態…
「ほらな、私の言った通りだろうが!」
と、したり顔の社長を想像する…
チッ!!
わずかでも抵抗する様に、思わず舌打ちをしてしまう。
社長はいわゆるワンマンで、決して好きなタイプの人ではなかった。
自分が無能のせいであるのは認める、それを認めた上で、ものすごく叱られた。
あの怒号はメンタルの弱い自分にはかなりキツかった。
そのせいで鬱になりかけた事もあった。
正直、今でも会いたくは無い。
ただ、あの言葉だけは何年も経った今でも覚えている。
今の自分の部屋の状態が、今の君の心の状態。
ふと深呼吸し、しばし仕事を中断する…
掃除すっか…
読みかけの本を棚に戻す。使った筆記用具、テープも所定の位置に戻す。
乱雑に置いてある商品、細かい紙切れ、レシートの束、その他もろもろを整頓する。
決して掃除のプロではないから、片付けた跡も誰かが見れば、
「え、これで片付けたって言えるの?」
と言われるかも知れない。
いいじゃないか!これが大雑把なB型の限界だって!!!
と、一人言い訳をしてしまう…
とは言え…あの社長だったら、この程度の掃除だと許してくれないだろう。
と、強迫観念じみたモノを感じ、もうちょっとだけ掃除をする。
読み終えたチラシを捨て、絡まるケーブルを解きほぐし、最後に掃除機をかける。
まあ、自分にしては良くやったよ。
そんな自画自賛をしながら、自分の部屋を見渡す。
いつの間にか、気持ちもちょっとスッキリしている。
掃除をする気力があるくらいなら、
既にある程度は気持ちに余裕があるんじゃないか?
と思う時もあるが、
まあ、それでも掃除をしたからスッキリしてるのだと思う事にする。
ふと、「こうしたらどうかな?」と小さなアイデアがひらめく。
それでちょっとやってみよう!となる。
こうした事が思いつくのは、決まって掃除をした後の話だ。
テスト前の学生が勉強をする気分にならなくて、
掃除を始めてしまうのはよくある事だと思う。
ただ、それは必ずしも現実逃避ではないだろうとも思う。
自分の部屋の状態は自分の心の状態。
これをもし本当の事だと仮定したら、
まずは自分の気持ちを整頓するのも悪くは無い選択肢だ。
個人的にはその会社に対しては良い思い出は全くと言って良いほど無いけれど、
これからも一生使えそうな、この言葉を受け取った事だけは
収穫だった様にも思えるのだ。
以上です…
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