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トリックものの小説が好きだったりする…が…
小説にもいろんなジャンルがある。個人的にはあまり本を読むタイプではないのだけれど、あえて好きなのを挙げるとすれば「トリックもの」である。
トリックというと推理小説が主になるが、もう少し広い意味で「謎解き要素があるモノ」全般が好みである。
そしてトリック自体もまた様々にタイプがある。密室トリック、心理トリック、物理トリック、etc...
そんな中でも、自分は昔から「叙述トリック」が一番好きだった。
叙述トリックとは?
叙述トリックを簡単に説明すると、
小説の暗黙の了解とも呼べる「書き方のルール」を意図的に破って読者にミスリード(間違った解釈、認識)させる仕掛け
の事である。
一般的な例で言えば…
・「ボク、オレ」と言ってた主人公の自分が、終盤で女性だったと分かる、とか…
・自分がいる時代が実は何百年後の世界だった、とか…
・妙に若々しいセリフから若者と思われたのに、実はおじいさん(おばあさん)だった、とか…
・物語の司会進行役と言ってもいいハズの、語り手の自分が犯人だった、とか…
そんな感じだ。
叙述トリックは基本的に、いかに読者にミスリードをさせるかと言う事が非常に重要になってくる。
上の一例で見てみると…
例えば、主人公の自分を「ボク」と呼称させてみたり、友人の男性と和気あいあいと食事してるシーン等を描写したり、同性であるハズの他の女性に好意を持たせたりしたとする。
すると、読者はその人物を「男性」と勝手に思い込んでしまう。
そして、物語の終盤にネタバレをすることで読者には衝撃が走る。
中には「いやいや、コイツは男性だって言ってるシーンがあったよ!」と最初のページから読み返す読者もいることだろう。しかしなるほど、そんな証拠となるページはどこにも存在しないのだ。
全ては自分のミスリードだった、というワケだ。
ダマすべき仕掛けで読者をダマし「やられた!そうきたか!」と感嘆させる。
多くの読者を手の平の上で転がすこの感覚…作者にとっては、この上ない至福の時である事だろう。
トリックを使った作品の難点
叙述トリックを使った小説で、最も好ましい楽しみ方は、
何の前知識もなく、勘ぐらずに素直に読んでダマされる。
これに尽きるのではないかと思う。
ただ、なかなか現代では小説を100%楽しむ事は難しい気もしている。
なぜならトリックを扱う小説には様々な難点もあるからだ。
1. 宣伝で「大どんでん返し」とか言っちゃってる
何かを大量に売るためには、宣伝は必要だ。商品とセットと言ってもいい。
宣伝では、その商品の「売り」となる部分を思いっきりアピールする。
例えば、
「大どんでん返し」とか、「驚きの結末」とか、「ラスト10秒を見逃すな」とか、
その時点でなんらかのトリックがあるのでは?と、読者に警戒心を与えてしまっている。これが私にとっては解せない部分でもある。
仕方のない事ではあるけれど、本来の小説の楽しみ方は80%くらいにまで減ってしまう気もしている。
2. たくさん本を読んでる人はトリックの驚きが減少する
この世には無類の読書好きという人達が存在する。
読書自体は絶対に良い事である。それだけは間違いない。
ただ、たくさんの本を読んできていると言うことは
「物語の意外な展開」というのも様々知っていると言うことでもある。
例えば、ある叙述トリックを使った本を読了したとして、
またこのパターンか!!!
と嘆いてしまった事のある人もいるのではないだろうか?
そう、たくさんの本を読んでいるが為に、ある程度の「意外な展開」というのを経験してしまっているのだ。
3. 映画化がしにくい
ベストセラーになった小説は映画化されるのが世の常だが、叙述トリックを使った作品の場合は、映像にしやすいモノと難しいモノがある。
「実は何百年後の世界だった」パターンの場合は、特に違和感なく映像化できるが、
「実は主人公の私は〇〇だった」パターンだとかなりヴィジュアルとするのは難しくなる。
そもそも、叙述トリックは小説ならではの特性をつかって正体を隠してるのに、映像になってしまうと成り立たなくなってしまう。
よく「映像化不可能と言われた作品がついに映画化!」というフレーズを聞いたりするが、フタを開けると苦肉の策とも呼べるような対応策しか出来てなかったりする事も多い。
それだけ叙述トリックの映画化というのは難しいのだろう。
まとめ:それでもワクワクするような叙述トリックに出会いたい!
こうして考えると叙述トリックはマジックショーに近いモノがある。
観客たちを言葉巧みに誘導させ、そして摩訶不思議なイリュージョンで感動させる部分は共通である様に思う。
一つ違う点は、作者は最後にタネ明かしをしなければならない事だけど…
今の時代だと、100%見たことのない叙述トリックなど存在しないかも知れない
本を読めば読むほど、「どこかで見たような仕掛け」を感じてしまうのは必然なのだ。
新たなトリックを追求することは、サイコロで「7」の目を出そうとする事に近いのだ。
それでも、プロ作家さんでも個人作家さんでも、
まだ誰も見たことのない手つかずのトリックをいつか生み出して欲しいと思う。
何十万、何百万の書籍が存在するこの世界においても、「7」の目を出すイリュージョンは存在するのだと信じている。
以上です…
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