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「リアリティ番組」で起こった悲劇…
2012年からフジテレビで放送され、今なお人気を博している「テラスハウス」。
2020年5月23日、この番組に2019年から出演されていたプロレスラーの木村花さんが
22歳と言う若さで亡くなりました。
「テラスハウス」は、一つのシェアハウスに複数の男女が共同で生活を送ることで生じるメンバー同士の人間関係や恋模様をドキュメンタリータッチで描いています。
俗に言う「リアリティ番組」と呼ばれるジャンルで、現在はNetflixでも配信されています。
木村花さんの死因は自殺と言われています。
一体どうして彼女は死ななければならなかったのか…?
彼女が死を選んだきっかけではないかと思われる出来事が、
この番組内で起きた「洗濯機事件」と呼ばれるものです。
それは、ルームメイトの男性が誤って自分の衣類と一緒に
木村花さんが大事にしていたコスチュームも洗濯・乾燥して縮んでしまい、
着れない状態になってしまった事に木村さんが激怒したというものです。
彼女の激怒の様子が放送され、それを見た視聴者から反感を買ってしまい、
木村花さんのSNSには連日100件以上もの誹謗中傷が直接届き、
彼女自身も精神的に追い込まれてしまったのかも知れない、との事です。
↑また、こちらの投稿記事によりますと、一説にはこのコロナ禍の状況において、
プロレスラーとしての収入が激減してしまった事、
また「テラスハウス」の番組内では、ルームメイト同士の恋愛模様も一つの醍醐味となっていますが、最近では他のメンバーが中心になる事も多かったみたいで、
彼女自身の立ち位置においても、悩みがあったのではないかとも考えられています。
そんな中、起きてしまった「洗濯機事件」。
これが番組特有の演出だったのか、それとも本当に偶然起きてしまった出来事なのか、
それはわかりませんが、少なくとも木村花さんにとっては大きなイメージダウンとなってしまった事は否めません。
このシーンが放送されたかされなかったかで、彼女の運命が大きく変っていたのではないかと思うと、非常に残念でなりません。
彼女への批判がここまで大きくなってしまった理由。
その一つには「リアリティ番組」と言う構造自体が、
他の番組とは違った特性を持つからではないかと思われます。
もしもドラマであれば、悪役(ヒール)を演じる俳優さんが、
どんなにヒドい事をしても、視聴者からはそこまで叩かれることはないでしょう。
なぜならドラマ自体がフィクションであると説明されており、
視聴者も俳優が演じている事を理解しているからです。
しかし「リアリティ番組」の場合は、よく「台本がない」と言う枕詞が付くくらいに、
文字通り「リアルさ」が追及されています。
なので「リアリティ番組」での悪役は、視聴者にしてみれば
「本当にそういう性格の悪い人」と言う心理が働いてしまうのでしょう。
そして、今ではSNS等を通じて、視聴者の方が直接芸能人に対して
簡単にダイレクトに意見を伝えることができるので、
番組の内容に怒り、木村花さんに対して辛辣な言葉を投げかけた人も多かったのかも知れません。
和田アキ子さんは自身の番組で、
バラエティ番組では製作サイドから「こう言って下さい」とか「強く怒って下さい」と依頼される事も多く、
その演出に対して批判されてしまう事に憤りを感じている事を語っています。
バラエティでもそういう事があるのですから、
「リアリティ番組」ではその度合いがもっと強くなるはずです。
視聴者からしてみれば番組が「リアリティ」を語っている以上、
「演出なんて絶対にないし、全て事実が放送されているに違いない!」
と判断してしまう事も無理はありません。
実は「リアリティ番組」出演者は自殺者が多い…
これはかなり古くから言われているみたいですが、
日本でも海外でも「リアリティ番組」に出演される方の中には、
後に自殺をしてしまう事も多いのだそうです。
「愛する二人 別れる二人」
例えばその昔、「愛する二人 別れる二人」と言う番組がありました。
一般公募により選ばれた離婚の危機に直面する夫婦が、今後も結婚生活を続けるか、別れるかを番組内で決めさせるという内容ですが、
この番組に出演したある女性の方が、自殺してしまいます。
その後、遺書にはこの番組で「やらせ」があった事が書かれてあり、実はその女性は未婚だった様です。
番組に出演した事自体が、死を選んだきっかけなのかどうかはわかりませんが、
遺書にも書かれていたとなると、原因の一つと考えるのが自然でしょう。
この事が明るみに出てから、番組は打ち切りとなってしまいました。
「コー・ランタ(Koh Lanta)」(フランス)
また、海外に目を向けると…
出演者たちが島での生き残りをかけて戦うフランスのリアリティ番組「コー・ランタ(Koh Lanta)」において、2013年、出演者が心臓発作で亡くなってしまうと言うショッキングな出来事が起きました。
その方が亡くなった一週間後に、同番組に出演していたフランス人医師の方がメディアから「不当な非難」を受けていると訴える遺書を書き残し、自殺をしてしまいました。
おそらくは医師と言う立場であったために、他の出演者よりも責められてしまったのかも知れません…
短期間で2名もの死亡者を出してしまったこの番組ですが、2020年現在も放映されています。
「Love Island」(イギリス)
リアリティ・デート番組の闇 …「ラブ・アイランド」のスターが自殺 - Onlineジャーニー
イギリスのリアリティ系デート番組「Love Island」では、2017年に出演していたマイク・タラシティスさん自宅近くの林で遺体となって発見された事が報道されています。
本来はタラシティスさんは紳士的な男性でしたが、番組内では「Muggy Mike(暑苦しいマイク)」と呼ばれるほど、クセのある人物を演じていた様です。
出演終了後も、本来の自分と異なる人物像との差に悩む日が続いていたということです。
また短期間で親友や祖母を失ったと言うことで、精神的に追い詰められていたのかも知れません…
「チャク」(韓国)
韓国のリアリティ恋愛番組「チャク(Jjak、相棒)」では、
約10人の男女が1つ屋根の下で1週間生活し、最後にパートナーを選ぶ様ですが、
選ばれなかった人に対しては、相当みじめな演出をされる事もあったみたいです。
2014年、ある女性の方は、その様子が国内で放送されると自分が韓国では暮らせなくなると周囲に話していて「もう生きていたくない」との遺書を残し命を絶ってしまいました。
この事件を受けて、番組は打ち切りが決定したということです。
「The Real Housewives of Beverly Hills(ビバリーヒルズの実在の妻たち)」(アメリカ)
リッチで美人な奥様方の私生活を紹介するアメリカのリアリティ番組「The Real Housewives of Beverly Hillsの(ビバリーヒルズの実在の妻たち)」。
2011年、この番組のメインキャストのある一人の出演者の夫が自宅内で首を吊っているのが発見されました。
その夫は当時、自分の妻から離婚を申し立てられていて、また巨額の借金も抱えていつつもテレビで注目されていたせいか収入に見合わない生活をずっと送っていた様です。
この方自身も、妻に暴力を働いていたりと問題はあった様ですが、常に私生活を世間の目にさらされていると言う精神的なストレスも相当あった様です。
「ジェレミー・カイル・ショー」(イギリス)
一般から募集された視聴者がプライベートな問題について番組内で議論するという「ジェレミー・カイル・ショー」。
2005年から放映され14年間も続いた人気番組だった様です。
2019年、ある男性出演者は自身の浮気が否定されなかったことを苦に自殺したとのことです。男性は婚約者に潔白を証明するために「うそ発見器」をかけましたが失敗し、2人は別れることとなりました。
例え本当に浮気してなかったにせよ番組内で「うそ発見器」に失敗すれば、大多数の視聴者はその男性がウソをついていると考えてしまうのが自然です。
おそらくは彼に批判が殺到してしまったのでしょう。
番組はその後、打ち切りになりました。
この様に、リアリティ番組に出演するのは、自身の知名度を飛躍的にアップさせることができますが、同時に相当な精神的ストレスを抱える可能性もある様です。
例えば、「トゥルー・トーリ/ True Tori」と言う番組は「ビバリーヒルズ青春白書」で知られる女優のトーリ・スペリングさんのプライべートな生活を赤裸々に映した事で人気を博しました。
しかし夫で俳優のディーン・マクダーモットさんは、自身の私的な生活が常にさらけ出されることに限界を感じ、降板を明らかにしました。
一時は自殺を考えるほど、情緒不安定な状態にまで陥ったとの事です。
テレビ慣れしているはずの俳優でも、ここまでストレスを感じてしまうリアリティ番組の恐ろしさが垣間見えます…
リアリティ番組出演者を襲う闇
個人的に「リアリティ番組」に出演される方々には3つの危険が襲うと考えています。
1.本来の自分との乖離
本来の自分と、キャラクターとして演じた自分の差。
いくら「台本がない」とは言え、何も起きなければつまらないと称され番組打ち切りは必至です。なので出演者の方々も番組を盛り上げるために、自分とは違うキャラクターを演じることもあると思います。
時には生意気な言動をとる悪役(ヒール)として演じてしまうことも大いにあるでしょう。
しかし、テレビ放映後、視聴者の多くはその演じたキャラクターが出演者の本来の性格だとみなしてしまいます。
これはドラマや映画に出演する俳優にも通じると思いますが、リアリティ番組はその比ではないくらいに、定着してしまう可能性が高いです。
なにせ「リアリティ」なのですから…
番組の性質上、出演者の多くは多少は「盛ってしまう」はずですから、ずっと尾を引いてしまう問題と言えそうです。
2.SNSでの誹謗中傷
SNSの登場で、視聴者と出演者と垣根は限りなく低いものとなりました。
その気になればいつでも、ダイレクトに出演者の方にコメントを残すことができるようになります。
逆に言えば、辛辣な言葉や誹謗中傷も簡単に届きやすくなったと言うことです。
確かに、毎日毎日悪意のあるコメントが送られてくれば、どんなに精神的に強い人でも気が滅入ってしまうでしょう。
木村花さんの場合も、放送後はずっと誹謗中傷を続けていたあるSNSユーザーに対して
「いいね」をつけた後に亡くなってしまったと言うことで、かなり情緒不安定な状態が続いていた様です。
3.番組内でのサポートは皆無
番組出演者は番組内での自身の行動が批判を呼び、糾弾されてしまったとしても番組からサポートがあることはほぼ無い様に思われます。
番組側からしてみれば「出演させてやってる」立場でしょうし、チャンスを手にしたい出演希望者の方は星の数ほどいるワケなので、別にその人じゃなくても良いのです。
つまり番組側は「圧倒的に上の立場」にあると言うことです。
また、この番組に出演しているおかげで出演者にもメリットがあるのは事実なので、何かトラブルがあっても出演者は泣き寝入りするしかないのかも知れません。
木村花さんの「洗濯機事件」の場合も、放映すれば木村花さんに対して非難が集中してしまうのは明らかですが、話題を呼んでしまうので番組としては配信、放送等で何度も流せば流すほど「おいしくなる」ワケです。木村花さんの精神状態やケアはお構いなしに…
結果としてこの悲劇につながってしまいました。
あくまでも憶測ですが、出演契約書等には「番組に出演した事による、いかなる不都合も当番組では責任を持ちません」的な項目も含まれているはずなので、出演者としてはどうすることもできなくなります。
まとめ:失った命は戻らないが、せめて今後に向けた改善を…
私は個人的にリアリティ番組系は好みではなく「テラスハウス」も一度も見たことはありませんでした。出演者の方を全く知らない自分でも、今回の件はショックを受けてしまいました…
「テラスハウス」に関してはお笑い芸人の「ニューヨーク」が、最近の番組の傾向に対して警鐘を鳴らしていた事が話題となっています。
以前から危惧されていた状況だった様ですね。
また「女性セブン2020年6月11日号」の記事中では、
この記事内容が真実であるとしたならば、起こるべくして起こってしまったのだと言わざるを得ませんね…
とても悲しい事です…
また、今回の木村花さんの死去を受けて、Twitterを始めとするSNS企業は名誉毀損や侮辱等の投稿を禁止すると発表しました。
死者を出してしまった以上は、おそらく「テラスハウス」は打ち切りとなると思います。
ただ、リアリティ番組は人気の高いコンテンツであることから、今後も製作されていくことは間違いないでしょう。
人の命は取り返しがつきませんが、今回の件を受けて少しでも改善されていく事を願うばかりです…
以上です…