小説『教室が、ひとりになるまで』を紹介!!
こんばんは!まるく堂です!
最近、2019年に発行された浅倉秋成(あさくら あきなり)さんの
『教室が、ひとりになるまで』と言う本が面白かったので紹介したいと思います。
あらすじ紹介
私立北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ひとりは学校のトイレで首を吊り、ふたりは校舎から飛び降りた。「私は教室で大きな声を出しすぎました。調律される必要があります」という、同じ文言の遺書を認めて。垣内友弘にとって三人の死は疑いようもなく自殺―のはずだった。白瀬美月の言葉を聞くまでは。「三人とも自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」最高のクラスで、何故『自殺』は起きたのか。『犯人』の目的は何なのか。伏線の狙撃手が贈る、慟哭の本格青春ミステリ。
舞台は「私立北楓高校」。そこで3人もの学生が自殺した事から始まります。
亡くなったのはみんな主人公「垣内友弘(かきうち ともひろ)」と同じ二年生。
元バスケ部のエースだったり、明るいムードメーカーだったりと皆クラスの中心的存在であり、死を選ぶとは思えない様な生徒たちの相次ぐ自殺。
今やクラスは嗚咽や涙、悲しみで溢れかえっています。
そんな中、垣内は担任の「河村」に頼まれクラスメイトの「白瀬美月」の様子を見てくる様に頼まれます。事件以来、彼女はここしばらく学校を休んでいたのです。
白瀬とは同じマンションの隣同士な事もあり、渋々承諾する垣内。
501号室のインターホンを押すと、白瀬が扉から顔を覗かせました。
最近は疎遠になっている事もあり、彼女に対し感じてしまう気まずさ。
無難な会話で終わらせようとした時、
「人殺しがいる、みんなあいつに殺されたの。」
白瀬の予想もしない言葉に垣内は耳を疑います。
彼女が言う「あいつ」とは、彼女が学校で出会った「死神」の事。
学校行事の準備中、死神の仮装をした「あいつ」が突如白瀬の前に現れ「生徒は自殺ではなく私が殺した」と言う告白をしてきたと言います。そして死神が名指しした3人目の殺害予告も実現してしまい、彼女は怖くなり引きこもってしまったのでした。
3人は自殺ではなく殺された…?
あまりに唐突すぎて半信半疑になりつつある垣内でしたが、白瀬の表情から決して嘘とも思えない…
それからしばらくした後、宛名のない手紙が垣内に届きました。
そこに書かれていたのは
「あなたはこの北楓高校に伝わる特殊能力の33代目の受取人に選ばれました」
と言う言葉。始めはイタズラと一蹴していた垣内でしたが、
やがてそれが事実であると確信させる出来事が…
と言う感じで物語は展開していきます。
登場人物紹介
この作品に出てくるキャラクターは特にイメージ画像とかは無さそうなので、
『星宝転生ジュエルセイバー』のフリー素材を使って
私のイメージに近いイラストを使って紹介したいと思います。
なので、以下のイラストは私の独断と偏見によるイメージ画像です。
実際の登場人物の設定と違う部分も多々あると思いますが、
ご了承下さい…
垣内友弘
私立北楓高校の高校2年生で、この作品の主人公。
今回亡くなった3人の生徒とはあまり関わりがなかったため、
ショックも少なく、人に対して割と無関心な性格。
帰宅部であるが音楽に興味があり、ギターを買うためにアルバイトに励む。
私立北楓高校に伝わる特殊能力の「受取人」に選ばれてしまう。
3人の自殺が自殺ではないと言う白瀬の話と、
謎の手紙から「受取人」があと3人いる事を知り、
犯人が自分と同じ「受取人」ではないかと疑い始める…
白瀬美月
私立北楓高校に通う高校2年生。
垣内とは同じマンションの隣同士。
しかし現在は疎遠がちになっていた。
殺人を告白した「死神」に次はクラスメイトの「山霧こずえ」を狙うと言われ、
怖くなり学校に行けなくなってしまう。
垣内にこずえを守る様に頼むのだが…
山霧こずえ
3人の自殺にショックを受けつつも、
中止になりそうだった学校行事「レクリエーション企画」を
成功させるためクラスをまとめようとする。
白瀬が出会った「死神」によると次のターゲットは彼女だと言うが…
八重樫卓
垣内と同じクラスで、サッカー部に所属する仲間思いの熱い青年。
亡くなった生徒たちとは交流があった事もあり、彼らの死を深く悲しんでいる。
壇優里(だん ゆうり)
目を引く程の美人だが、普段は目立たない生活を送っている。
生徒の一人が自殺した際に目撃してしまった生徒。
良かった点
能力モノなのに本格ミステリ!
この小説では、舞台となる「北楓高校」に伝わる4つの能力と言うのが非常に重要なポイントを占めます。
主人公である垣内友弘が受け取った手紙。そこには彼が能力者の呼称である「受取人」として選ばれた事が書かれてありました。
最初は冗談だと思っていた垣内でしたが、ある事をきっかけにそれが疑いようのない事実である事がわかってきます。
そして、これまで自殺として処理されていた生徒達は、自分と同じ能力者「受取人」によって殺されたのではないかという疑念を抱きます。
普通のミステリだと「犯人が超能力を使って殺害した」なんて書かれた時点で、ほとんどの読者は興醒めしてしまうと思います。
なぜなら、それだと「何でもアリ」になっちゃうからですね。説得力が生まれません。
ただ、この小説のスゴいところはこの不思議な力にも細かい設定を施し、ただの便利な小道具としてではなく使う際のデメリットも存在させる事で、通常の「凶器」と同じ様なポジションに落ち着かせている点です。
例えば、この「受取人」の力は
能力の内容と発動条件を他人に知られたり言い当てられたりすると力が失効したり、
学校の敷地内でしか能力が使えない等、制限が存在します。
また能力も4つそれぞれが異なるものとなっています。
垣内が得た能力は、自分が痛みを感じた時に人の話を聞くと「人のウソがわかる」と言うものでした。そこで垣内は「安全ピン」を自分に突き刺すと言うかなり痛々しい方法を用いてクラスメイトを調査しようとします。
しかし、他の受取人に自分の存在や能力の発動条件を知られたりすれば、その時点で能力が消され、最悪の場合は自分が殺されるリスクもあります。
できる限り隠密に行動しつつ調査を進めていく垣内、
しかし「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」と言う言葉も有る様に、
他の能力者もまた垣内に気づきつつあるのです…
この見えない敵との心理的な駆け引きや伏線も非常に面白く、緊迫した物語が展開されていくのです。
学生達のリアル
もう一つのキーワードと言っても良いのが「スクールカースト」ですね。
学級内での格差ってヤツです…
事件が起きた2年A組は「最高」と称する者がいるほど、
連帯感も強く中心的人物が多くいるクラスです。
スポーツが出来る子、頭の良い子、面白い子、そうした子達の中には、教室を仕切る立場の子も生まれます。
ただその一方、生徒の全てがそう考えているワケでもなく、そこには「カースト上位」から外れている生徒も存在します。そんな彼らからすればこの教室はまた違う側面を持っているのです。
そうした格差による軋轢が様々な生徒達に影響を及ぼし、葛藤や苦悩が一つのうねりとなり事件を呼び起こしたようにも思えてきます。
主人公の垣内くんは、本来は誰も知ることのない生徒の本音を「受取人」の能力を駆使して解明していくのですが、その予想を覆す展開もこの小説の見どころとなっています。
まとめ:展開が秀逸でかなり楽しめました!!
今回は浅倉秋成さんの小説『教室が、ひとりになるまで』を紹介させていただきました。
浅倉さんは「伏線の魔術師」と呼ばれるほど、作品に膨大な伏線を忍ばせることで有名な様です。
確かに、まるで一単語一単語がジグソーパズルのピースの様に何らかの意味を持たせてる様に思えるくらいに見事な伏線が揃っていました。
能力モノではありますがミステリとしても十分に読み応えがあるのは、作者である浅倉さんの底知れない文章表現力と構成力の賜物であると思います。
この才能はスゴすぎです!!
『教室が、ひとりになるまで』はKindle Unlimitedで読めますので、契約されている方はぜひ読んで頂きたいです!
浅倉さんの作品は『六人の嘘つきな大学生』と言う小説もかなり評判が良い様ですね!
こちらも面白そうです!!
以上です…